史料保存利用問題シンポジウム 2016
日 時 2016年6月25日(土)13:30~17:30
会 場 駒澤大学 駒沢キャンパス 1号館 1-204教場
主 催 日本歴史学協会・日本学術会議史学委員会
後 援 全国歴史資料保存利用機関連絡協議会(予定)・日本アーカイブズ学会(予定)
テーマ 被災史料・震災資料の保存利用と公文書管理
趣 旨
東日本大震災から5年がたった。大地震とそれに伴う大津波に、東京電力福島第一原子力発電所の爆発事故が加わり未曽有の大災害となり、その復興・復旧への道のりは未だ厳しい状況にある。そこには、史資料が消滅したのみならず、生活地域そのものが消え去ってしまった場合が少なくない。私たちは、この大災害から多くを学び、また学ばなくてはならないという思いを持ち、史料の保存利用問題に取り組み、地震史料の発掘や歴史地震の研究も進めてきた。
そうしたなかにも、私たちの住む列島は災害列島の名に相応しく、東日本大震災以後も大小の災害に見舞われている。間近なところでは、昨年9月の茨城県常総市の大洪水の発生による地域史資料の被災が想起されるが、速やかに組織的なレスキュー活動が立ち上がった一方で、津波による被災とは異なる救済作業の困難さもあると聞く。青木氏の報告では、東日本大震災被災自治体と常総市を取り上げて、被災行政文書の救済と公文書管理の在り方を問う。
被災史料の救済活動に、ボランティアの参加と各地の史料ネットの存在はすっかり定着してきたが、〝史料ネットという在り方〟のもとを辿れば阪神・淡路大震災に遡る。昨年は阪神・淡路大震災から20年目の年であったが、年月の経過は、震災関連資料の管理・公開、そして選別・廃棄に関わる問題の発生を招くことが懸念される。川内氏の報告では、こうした震災関連資料の現状と課題を取り上げる。
一方、本年は2011年4月に施行された「公文書管理法」の見直しの年である。既に関係諸団体等において種々検討が行われているが、歴史学に携わる立場で同法の成立・運用に関心を持ってきた私たちは、この見直しの機会に改めて問題点を考える必要があろう。井上氏の報告では、公文書に記載された公人やそれに付随する情報の開示のあり方について、利用者の観点から同法の問題点を照射し、法の運用のあり方を考える。
これらの報告を通じて、被災史料の救出活動の新たな展開を見据え、被災を防ぐという日常的な活動の重要性を改めて認識するとともに、公文書の管理・公開問題も含め、史資料の保存利用の在り方を広く議論する機会としたい。
報 告
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- 青木 睦(国文学研究資料館准教授)
「被災した組織アーカイブズの消滅と救助・復旧に関する検証 ―東日本大震災の基礎自治体と常総市の事例―」
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- 川内 淳史(歴史資料ネットワーク事務局長)
「阪神・淡路大震災被災地における震災資料の現状と課題 ―民間資料と行政文書について―」
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- 井上 正也(成蹊大学法学部准教授)
「公文書管理と個人情報保護」
次 第
13:30~13:35 開会挨拶(高埜利彦 日本学術会議会員)
13:35~13:45 趣旨説明(佐藤孝之 日本歴史学協会史料保存利用特別委員会委員長)
13:45~14:25 第1報告(青木 睦 日本学術会議連携会員)
14:25~15:05 第2報告(川内淳史)
15:05~15:45 第3報告(井上正也)
15:45~16:00 休 憩
16:00~17:25 質 疑
17:25~17:30 閉会挨拶(木村茂光 日本歴史学協会会長・日本学術会議連携会員)
※司会・進行:大友 熊本