日本アーカイブズ学会2018年度第2回研究集会
「薬害アーカイブズ:現状と課題」
(共催:厚労省科研(平成30年度厚生労働行政推進調査事業費補助金(医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス政策研究事業))「薬害資料データ・アーカイブズ構築に向けた基盤的研究」)
1 開催趣旨
2010年4月、「薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会」は、「すべての国民に対する医薬品教育を推進するとともに、二度と薬害を起こさないという行政・企業を含めた医薬関係者の意識改革に役立ち、幅広く社会の認識を高めるため、薬害に関する資料の収集、公開等を恒常的に行う仕組み(いわゆる薬害研究資料館など)を設立すべきである」と指摘しました。この指摘を踏まえ、薬害資料に関する調査研究が、被害者団体の保管してきた資料を主な対象として進められてきました。
薬害という言葉は、1950~60年代にかけてサリドマイドによる胎児被害とキノホルムによるスモン被害が発生したことをきっかけとして広く使われるようになりました。血液製剤へのHIV(ヒト免疫不全ウイルス)混入による「薬害エイズ」被害が大々的にマスコミに取り上げられたことをご記憶の人も多いと思われます。
全国薬害被害者団体連絡協議会(薬被連)の代表世話人・花井十伍さんは次のように述べています。「クスリ‥医薬品には必ず副作用があり、医薬品の副作用被害を完全に無くすことはできません。しかし、薬害は別です、薬害は単なる副作用被害とは異なり、本来医薬品として販売すべきではなかった、用法・用量が適切に表示されていなかった、市販後に判明したないし生じた新たなリスクに対する対応が遅れたなど、人災であって、かつ個人的な被害ではなく、社会的に広がった被害を私たちは、薬害被害と呼んでいます。」(法学館憲法研究所
http://www.jicl.jp/hitokoto/backnumber/20161107.html)
薬害の被害者は被害への直接的な補償だけでなく、被害の実態調査や再発防止のための対策を求めて裁判を起こします。被告は薬品を製造・販売した企業および医薬品規制に対して監督責任をもつ政府です。被害者たちはお互いに力を合わせ、また弁護士や専門家など多くの人々の協力を得ながら裁判を進め、政府や企業の不法行為を指弾してきました。和解時に、そうした被害が二度と起こらないための政策を創らせてきました。またそれと並行してこれらの経験を伝えることを望む声が高まっていることも事実です。
このような活動を通じて蓄積された薬害に関する資料は、いずれも近代以降のわたしたちの社会における負の記録遺産と呼ぶことができます。これらの資料をどのように収集し、活用することができるのか。個人情報が多く含まれるこれらの資料の管理体制はどのようにすればいいのか。被害に遭われた当事者の高齢化が進んでいる今、わたしたちは、こうした課題に直面していると言わなければなりません。
本研究集会では薬害資料調査・研究の現状を確認すると共に、こうした活動に関わっておられる当事者から取組みをご紹介いただき、課題と方策について議論を深めたいと考えています。
2 日時および会場
日時:2018年11月17日(土) 13:30~17:15 (13:00開場)
会場:リバティおおさか(大阪人権博物館) 研修室1
(http://www.liberty.or.jp/)
〒556-0026 大阪府大阪市浪速区浪速西3-6-36
3 プログラム
13:30-13:35 開会あいさつ(JSAS)
13:35-13:45 「開催趣旨説明」 林 美帆(あおぞら財団付属西淀川・公害と環境資料館)
13:45-14:15 「薬害アーカイブズ構築の意義について」 藤吉圭二(追手門学院大学)
14:15-14:45 「薬害アーカイブズ資料整理の現状について」 島津良子(奈良女子大学)
14:45-15:15 「当事者からの期待」 花井十伍(全国薬害被害者団体連絡協議会)
15:15-15:45 「コメント」 清水善仁(法政大学大原社会問題研究所)
15:45-16:00 休憩
16:00-17:00 質疑応答・ディスカッション
17:00-17:15 閉会あいさつ(JSAS)
4 その他
・参加無料。受付で「研究集会に参加」とお伝えください。
・事前予約不要です。当日直接おいでください。