日本アーカイブズ学会では、4月20日(土)・21日(日)の予定で日本アーカイブズ学会2024年度大会を開催します。そのうち、4月21日(日)午後に「公文書管理制度の再検討―司法資料の保存と利用を中心に―」をテーマとして大会企画研究会を実施します。
大会全体の詳細や参加方法等は後日ご案内しますが、まずは大会企画研究会の内容についてお知らせします。是非ご予定ください。
テーマ:「公文書管理制度の再検討―司法資料の保存と利用を中心に―」
日時:2024年4月21日(日) 14:00~17:00
会場:学習院大学(東京都豊島区目白1-5-1/JR目白駅改札すぐ) 南3号館
報告:
下重直樹(学習院大学教授) 「司法文書」の管理をめぐる制度と組織
浅古弘(早稲田大学名誉教授) 裁判記録の現状と課題を考える
藤野裕子(早稲田大学教授) 学術利用から考える裁判記録の保存・公開
企画趣旨:
公文書管理法の施行から十数年がたった現在においても、同法の主な対象は行政府に限られている。管理法制定時の衆議院附帯決議に「二十、行政機関のみならず三権の歴史公文書等の総合的かつ一体的な管理を推進するため、国立公文書館の組織の在り方について、独立行政法人組織であることの適否を含めて、検討を行うこと。」、参議院附帯決議に「十七、刑事訴訟に関する書類については、本法の規定の適用の在り方を引き続き検討すること。」とあるにも関わらず、司法府と立法府の文書については、現在まで法的・制度的な位置付けが曖昧なままである。一方で、アーカイブズ学においても、立法府・司法府についての議論が活発とは言えない状況があった。
そこで、公文書管理制度全体の再検討を視野に入れつつ、少年事件の記録や民事裁判記録の廃棄問題などで注目を集めた司法資料を素材に問題を提起したい。その際、司法資料を、裁判所をはじめとする司法に関係する機関および専門職において作成・取得された記録の全体と捉える立場に立つ。
以下、各報告の概要を述べる。まず、実務者としても研究者としても公文書管理制度を検討してきた下重直樹氏からは、国立公文書館法や公文書管理法の立法過程を改めて検証するなかで司法資料を取り巻く構造的な問題を指摘していただく。次に、司法資料の問題を一貫して追及してきた浅古弘氏から、現場のマニュアルをも対象に、司法資料の保存の現状と課題について整理していただく。さらに、藤野裕子氏からは、戦前の司法資料を利活用する歴史研究者の立場から、司法資料を対象としたとき、どのような利用と研究が可能か、さらに研究者はどのように振る舞うべきかを含め、問題提起をいただく。これらの報告を踏まえ、討論では、司法資料の保存と活用の現状を明らかにしつつ、公文書管理制度のあり方全体、さらに利活用者のあり方を射程に入れた議論を展開したい。
20年前の2004年4月に定められた本学会会則前文には、科学的研究とともに「アーカイブズの保存及び関連する諸課題に対する実践」をも担うことの重要性が強調されている。司法資料の適切な保存と利用、さらには、司法府も立法府も含めたより広範で適正な公文書管理制度の確立、という課題の解決に向けて、日本アーカイブズ学会創立20年を迎える本大会をそのきっかけにしたい。広く関心を持つ方々の参集と活発な議論を期待する。