日本アーカイブズ学会は、古田肇岐阜県知事に対し、「岐阜県歴史資料館の機能縮小等の再度見直しについて(要望書)」を提出しました。
要望書では、岐阜県が岐阜県歴史資料館の機能を縮小し、職員を大幅に削減する予定であることに関して、次の2点を要望しています。
(1) その機能縮小、職員削減を白紙に戻した上、岐阜県教育文化財団を指定管理者とする体制から県直営に戻し、アーカイブズ機能を十分に発揮できるようにすること
(2) 上記を実現するために、歴史資料館との協議により適切な規模の職員数とし、その半数以上を専門職員とすること
なお、要望書の全文は以下の通りです。
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岐阜県知事
古 田 肇 様
会長 高 埜 利 彦
私たち日本アーカイブズ学会は、日本と世界の各地に遺されたアーカイブズ(記録史料)、また将来アーカイブズとなる組織の記録について生成、保存、活用のあり方を研究し、その有効な方策を社会の中で実践していくことを目的にしている学術研究団体です(別添リーフレット参照)。本会は、貴県が財政の悪化をうけ行財政の抜本的改革に取り組む中で、岐阜県歴史資料館の機能を縮小し、また職員を大幅に削減する予定であることを知るに至りましたが、それは何よりも県民の利益にならないと考え、次のように再度見直すことを要望いたします。
第一は、その機能縮小、職員削減を白紙に戻した上、岐阜県教育文化財団を指定管理者とする体制から県直営に戻し、アーカイブズ機能を十分に発揮できるようにすることです。当該館は、英訳名がGifu Prefectural Archivesとされ、世界に通じる<アーカイブズ>の一つであり、実際にも、岐阜に生きた人々が遺した古文書等の歴史資料と、中長期的な価値をもつ公文書の両方を保存・活用する機能をもってきました。この二種の資料の総体、すなわち岐阜県のアーカイブズは、この地域に生きた人間の知恵と行動の証拠であり、また県政の努力を伝え、県民の権利を守り、社会と文化を活気づかせる情報資源です。今次の改革においては、むしろ様々なアーカイブズの発掘や重要な公文書の活用・公開を進めることを通して、インセンティブ、創造、信頼に溢れる岐阜県を築くことが真に県民の利益になるものと考えます。この意味で、岐阜県歴史資料館の充実を、県政運営の精神的かつ実質的な支柱の一つとするべきです。どうしても止むを得ず一定期間その縮小等を行う場合には、その期間が最短となるよう努力すべきであること、また県直営化の後には有意な活動を根拠づける設置条例が必要となることも申し添えます。
第二は、上記を実現するために、歴史資料館との協議により適切な規模の職員数とし、その半数以上を専門職員とすることです。歴史資料や公文書の収集・保存・活用プログラムを構築し、それを的確に実践していくためには、大学・専門機関等における教育・研修を受け、高度な知識、技法、倫理をそなえた専門職員を欠かすことができません。その配置によって、県の公文書管理およびアーカイブズの構築・運営をはじめて有効に推進していくことができるのです。
以上二点は、年金記録問題や薬害問題等を背景に、2008年2月、政府が初めて公文書管理と国立公文書館の拡充を政策課題に掲げ、去る11月の「時を貫く記録としての公文書管理の在り方」(有識者会議報告書)を基に制度改革・法律制定に動いていることとも軌を一にしており、必ずや岐阜県の未来を明るく拓いていく方策であると確信いたします。国立公文書館は求めに応じて助言を行うはずですし、本会も可能な限りの支援をいたす所存です。
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