日本アーカイブズ学会は、アート・ドキュメンテーション学会等と合同で、文化庁文化審議会文化政策部会に対して、パブリックコメントを提出しました。
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2010 年7 月8 日
文化審議会文化政策部会長
宮田亮平様
文化庁長官
玉井日出夫様
文化遺産に関するアーカイブ資料の保存と活用のための施策の充実を求める意見書
本意見書に名を連ねている各団体は、広く人類の文化的活動や文化的所産に関する情報や記録を保存・管理し、将来の知的資産として活用するための課題や方法を、学術的な研究テーマとしております。具体的には図書館、博物館・美術館、文書館などの機関や大学、会社、個人などの行う資料の収集、保存、整理、利用といった諸活動に関する調査研究に継続して取り組んでおります。
文書、写真、動画、音声、デジタルデータなどからなる、いわゆる「アーカイブ資料」は、たとえば美術、建築、音楽、演劇、舞踊、映画といったさまざまな文化遺産の成り立ちやその社会的享受をたどる上での不可欠な資料で、諸外国においては国家的な収集保存と、組織的な活用及び普及が行われています。また近年ではデジタル・ネットワークの発達を反映して、博物館、図書館、文書館といった館種の壁を超えた情報活用の連携(MLA連携)の実践も試みられています。これに比して、我が国の現状は制度、実態とも大きく立ち遅れているものと言わなければなりません。
この点に関し、第9 期文化審議会の文化政策部会の審議の中で、文化芸術各分野におけるアーカイブ構築の必要性についての意見が相次ぎ、その結果、2010 年6 月7 日に公表された「審議経過報告」において、「文化芸術分野のアーカイブ構築を着実に進めるとともに、その積極的な活用策を検討する」ことが重点戦略の一つとして明示されたことは、まことによろこばしく、貴部会の高い識見に深く敬意を表すものです。
今後、文化政策部会におかれましては審議を重ねられ、文化芸術振興基本法に基づく「基本方針」に関する答申を行われるものと存じますが、答申の策定に当たっては、上記戦略を具体化するために次の各事項について明示されるよう、強くお願い申し上げるところです。
・各分野の文化遺産に関するアーカイブ構築とその支援は国の責務であること
・そのために政府において必要な保存・研究機関を設けるとともに、地方自治体におけるアーカイブ構築の取り組みを支援すること
・図書館、博物館・美術館、文書館、大学、研究機関、企業等へのアーカイブ資料に関する専門家の配置を促進する施策を講じること
・高等教育において、デジタル・ネットワーク社会に即応したアーカイブ専門家の育成を支援する施策を講じること。また既存の専門家に対する再教育を促進すること
同時に、上記事項の実現を図るため、文化庁におかれましては当面以下の点について、必要な政策的措置を取られるよう、強く要望するものです。
・文化芸術分野におけるアーカイブ資料の伝来の状況について全国的な調査を実施すること
・これらアーカイブ資料の保護について、関係者の意見を聴取し、その方策を検討すること
以上、文化の保存と振興に関わる私どもの微意をお汲みいただき、積極的なご検討をいただきますよう、心からお願い申し上げます。
アート・ドキュメンテーション学会
会長鷲見洋一
記録管理学会
会長山崎久道
情報知識学会
会長根岸正光
日本アーカイブズ学会
会長高橋実
慶應義塾大学アート・センター
所長美山良夫
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