公文書管理法施行に伴う、国立公文書館等における「利用等規則」策定のためのガイドラインについて、
以下の6点のコメントを日本アーカイブズ学会の名前で内閣府へ提出しました。
1.ガイドライン全般
(運用の形式主義の排除)
情報公開制度の条文をそのまま転用しているため、全体的に実務性に乏しく、形式的で非現実的な書きぶりが多いように思われる。
管理のための管理、手続きのための手続きに陥る可能性が危惧される。
果たして本ガイドラインで国立公文書館等の実務が回るのか、利用者にとっての利便性が現在よりも改善するのか大変疑問である。
仕組みとして情報公開制度との連続性は保たれる必要はあるが、運用上まったく同一に行う必要はない。
現実の実務に則して利用等規則は定められるべきである。国立公文書館等における実務の現場や、利用者の意見をもっと反映させるべきである。
2.法制度全般
(判断の透明化と専門職の導入)
公文書の国立公文書館等への移管時における歴史的重要性の判断、国立公文書館等における事前審査および公開審査、制度全体を通じた形式主義の排除のためには、
司令塔としての公文書管理委員会とは別に、実務レベルでの専門職(レコードマネージャー、アーキビスト)の立場による判断と運用の透明化が必要不可欠である。
3.ガイドラインB-1(受入れ)、B-7(目録の作成・公表)関係
(公開までの流れの透明化)
公文書の受入れにあたっては、国立公文書館等の側に実質的な評価・選別権が与えられるような運用がなされるべきである。
また、以前から問題視されているように、各省庁の行政文書ファイル管理簿のファイル名は曖昧かつ抽象的であり、内容の特定が困難である。
特定歴史公文書の目録作成にあたっては、現用段階との連続性や紐付けを意識しつつも、ファイル名に内容を補足するなど、
利用者が検索する上での利便性を十分に考慮した、機能的な目録が作成されなければならない。
4.ガイドラインB-4(保存)関係
(適正な保存のために)
適正な環境で特定歴史公文書を保存することは当然である。
「留意事項」においては、恒温恒湿が前提とされているが、変温恒湿が良いという考え方もある。
その他、物理的な保存環境や保存手当てについては、保存科学の成果に基づいて、改めて検討をする必要がある。
また、「留意事項」で求められる環境を現在の施設や機器で整備できない館についてはどのような措置をとることが想定されているのか。
館の状況と資料の状態によって専門家が判断すべき問題であって、ガイドライン等で数値等を一律に定めるべき問題ではない。
5.ガイドラインC-2(利用請求の取扱い)関係
(運用の透明化・平準化)
特定歴史公文書の公開にあたっては、いわゆる「30年ルール」を原則(ガイドラインに盛り込む)とすべきであり、
やむを得ない場合にのみ例外的に非公開とできるような組み立てにすべきである。
また、事前審査の方針、公開審査基準、実施細則、内閣総理大臣への報告等の公表を義務化し、運用と公開制度の透明性を確保すべきである。
国立公文書館等に指定された各館(国立公文書館、宮内庁書陵部、外務省外交史料館、各大学文書館、日銀アーカイブ等)における運用と公開性は
同水準・同一基準が確保されなければならず、各館の利用等規則策定にあたっては、利用者の声を反映させるべくパブリックコメント等を求める必要がある。
特に、公開審査の基準は利用等規則と一体のものとして定め、公文書管理委員会の承認を得た上で一般に公表されるべきである。
審査基準を細則等の下位レベルに位置づけたり、非公表とすることによって恣意的な判断・運用がなされることがあってはならない。
現用段階(情報公開制度)で非公開であった情報でも、非現用(特定歴史公文書)では公開されるという、公文書館制度の基本原則が確立されなければならない。
6.ガイドライン全般
(ストックの透明化)
本ガイドラインは国立公文書館等の指定を受けた施設(国立公文書館、宮内庁書陵部、外務省外交史料館、各大学文書館、日銀アーカイブ等)に
今後新たに受け入れる資料について適用されるものと理解している。
しかしその一方、既に各館において保有されている未整理・未公開資料の「死蔵」や「隠匿」があってはならない。
利用等規則に沿った形での速やかな公開が努力義務として課されるべきである。
さらに、既に公開されている資料についても、遡及的にデータ更新がなされ、利便性が向上されることを希望する。