典拠:東京電力発表資料「各号機の経過の概要」
福島第一原発事故に関わる放射線測定データの保全と後世へのアーカイブズ化を
日本アーカイブズ学会 会長 高橋 実
日本物理学会 会長 斯波弘行
東日本大震災の際に発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故により、大量の放射性物質が環境へ放出される事態となりました。事故直後より政府、自治体、東京電力等により行なわれた様々な放射線の測定は、住民の皆さんの健康と将来を考える上で重要なデータとして、またあってはならない原子力災害の記録として、世界と共有し後世へ伝えるべき資料であると考えます。
一方この間に、市民や学術・民間機関による放射線測定も活発に行なわれ、それらの一部は個人のウェブサイトなどインターネット上で公開され、国民全体で共有する重要な情報となりました。それだけではなく、あらゆる立場の人々により放射線測定が広範に行なわれた状況それ自体が社会的・歴史的に重要な事実であり、資料としてできるかぎりありのまま後世に伝えることが重要と思われます。
これらの貴重なデータのほとんどは各機関や個人で個別に保有されているため、長期にわたって保全される保証がありません。また、それらのデータは統一的に保管されていないため、検索により所在を知るすべも充分に用意されていません。中には一般には公開されていない資料の中にそれとは知られず眠っている貴重な測定データもあるものと思われます。
各所に散在する貴重なデータを散逸・消失から守り、多くの人が活用できるようにするために、日本アーカイブズ学会と日本物理学会は、「東日本大震災アーカイブ」に取り組んでいる国立国会図書館と協力して、データの保全とアーカイブズ化の実現に向けた議論を進めております。同趣旨の取り組みは、日本学術会議や関連分野の学会においても検討が進められていると聞き及んでおります。
私たちは、放射線測定データのアーカイブズ化への検討を可能な限り迅速に進める一方、現在放射線測定データを保有しておられる機関や個人の方々に対して、アーカイブズ・システムの態勢が整うまでそれらのデータとそのデータを得た測定についてのあらゆる情報(メタデータ)の保全に努めてくださるよう呼びかけを行うものです。
典拠:国立国会図書館「2011/12/18 東電福島原発、被災地などの現地調査」