「特定秘密保護法案」に対する意見表明
日本アーカイブズ学会は、アーカイブズ(記録及び情報)に関する科学的研究と実践を担うものとしてアーカイブズ学を構築し、アーカイブズの適切な作成、保存、活用の実現を通じて、民主的な社会において真に自立した主体の形成に資することを目的として活動している。その立場から私たちは2011年に施行された「公文書等の管理に関する法律」(公文書管理法)において、公文書等が「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源として、主権者である国民が主体的に利用し得るものである」と位置づけられたことを高く評価し、行政文書の適切な管理によって、行政の適正かつ効率的な運営と現在及び将来の国民に対する説明責任を全うする、という本法律の目的が達成されるよう、その実施の状況を注視してきた。
ところが政府が国会に提出した「特定秘密保護法案」は、公文書管理法や従来の情報公開法の趣旨に相反し、私たちは次の点で強い危惧を持つ。
1.行政機関の長が行うとされる秘密指定の判断が、客観的な検証の機会を経ることなく、政権の恣意に支配される可能性が高い。
2.特定秘密に指定された情報が、時の経過を経ても国立公文書館等に移管され公開される保証がなく、行政機関自らが、歴史の検証の道を閉ざす結果を導く恐れがある。
このような点から、私たちは政府・国会に対し、「特定秘密保護法」の制定ではなく、むしろ公文書管理法の趣旨にのっとって行政文書の適切な管理のための方策をとることを求めたい。とりわけ、国立公文書館の機能を拡充して米国の「国立公文書館記録管理庁」が持っているような文書管理全般に関する指導・監督権限を付与すること、レコードマネージャーやアーキビストなどの文書管理の専門的人材を養成・配置すること、各政府機関の職員に対する研修を徹底して行うこと、などが重要であると考える。
2013年11月15日
日本アーカイブズ学会
会長 高橋 実